日枝露の日常~in school paper clubroom~

「あの」
「ん?」
 愛用のカメラに写った画像を眺めつつ適当に返事をする。
「何であなたはここにいるんですかねぇ?」
 新聞部部室にて、新聞部部長がワタシ、日枝露に向かってそう言った。
 さぁ、何故でしょう?
「特に大した理由は無いんじゃない?」
「何で張本人のあなたが疑問系なんですかねぇ!?」
「まぁ、暇だったからね」
「疑問系に対する質問はスルーですか……ってか、写真部の方に行かなくて良いの?」
「いやさ、聞いてくださいよ雪さんや」
「はいはい、何ですか」
「写真部の面子、全員奇跡的に風邪でぶっ倒れてんの。おかげで部室行っても暇なのよん」
「嫌な意味で奇跡的ですねぇ…」
 ま、元の部員の数もそんな多いわけじゃないけどな。
「おかげでゲームの対戦相手もいなくてご覧の有様だよ」
「待て、何をしている写真部員」
「いや、写真部に限らず大体の文化部って文化祭前とかイベントごとの時以外大抵こんなもんでしょ」
 まぁ新聞部がどーなのかは知らんし、知ったこっちゃないけど。

 雪ちゃんも諦めたのか、そのまま元の作業に戻る。
 お互い喋ることもないから、暫く部室を静寂が支配する。
 と、
 くぅ~
 突如響く音。
「……」
「……」
「うむ、今のはワタシのお腹の音だ」
「いや、言われなくてもわかってるけどさ」
 まぁこの部屋には二人しか居ないんだから当然なわけで。
「腹減ったんなら何か買ってくれば?購買まだ開いてるでしょ?」
「うん、ぶっちゃけ、それもメンドい」
「はぁ」
「基本朝昼晩に三食栄養摂取すれば人間生きていけるのだよ」
「栄養摂取って……なに、ダイエットでもしてるの?」
「いや、素にメンドいだけ。ぶっちゃけ、食に大したコダワリもないし」
 下手すると食事をすることすらメンドくなることもあるし。
 作者も最近仕事の日は忙しくて二食しか食えてないしな。……カンケー無いか。
「あなた、ホント変わってますねぇ…」
 恐らく変人と言いたかったところをちょびっとだけオブラートに包んだんだろう。ぶっちゃけ、大差無いような気もするが、まぁどっちにしたって、ワタシは自分が世間一般のまともな人種と一緒だとは思ってないよ。
 周りが自分のことをどう思おうが知ったこっちゃないしね。
 よく、眠くも何ともないときに眠そうな顔とも言われるけど――まぁ朝は超絶的に弱いけど――要するに気の緩んだ顔ってことなんだろうし。
 別に異性にモテたいってわけでもないから大して自分の顔や容姿なんて気にしちゃいない。
 この茶色っぽい髪も、染めてるとよく勘違いされるけど、髪質が弱いから色素が薄くてちょっと茶色っぽくなっちゃうだけだし。
 貧乳はステータスだ、とかも別にどーでもいいわ。ぶっちゃけ元ネタも知らんし。エロゲか何かだったっけか。
「そういや、改めて考えてみると、君ってギャルゲーの主人公みたいなポジションに居るんでない?」
「……はい?」
 ワタシの唐突の言葉に、ひっくり返ったような声が返ってくる。
 しまった。いつものように頭の中で考えてたことが唐突に出て会話の文脈としては飛躍しすぎてしまったか。
 ……ま、いっか。改めて説明するのもメンドいし。
 ってなわけでそのまま話を続ける。
「いやさ、君の周りには君の彼女が居て、以前は女子部員が居て、木ノ下君が居て、あまつさえワタシもいる。これ、何てギャルゲー?」
「いや、一人男が混ざってるんですけど」
 BL的な要素も混ぜてみました。
「そもそも僕に彼女が居るって時点でもはやゲームとして成り立ちませんよねぇ?」
「突如破局から始まるゲームもあるのだよ……」
「縁起でもないこと言わないでくれませんかねぇ!?」
 まぁからかってみただけだし。
「ってかそもそも、その場合、日枝も攻略対象キャラになっちゃうんだけど、それでも良いの?」
 呆れながら訊いてくる。
 おぉ、その選択肢自分で出しといて想定していなかった。
 で、想定してみたところ……
「最悪だね……」
「うん、その返しも最悪だよね……」
 いやぁ、だって、ねぇ?

「う~ん、冷静になって考えてみると、部室に男女二人だけってのも非情に危険な気もしてきたよ」
「入り浸ってる本人のくせに失礼ですねぇ」
「ワタシは平凡なか弱い一女性徒なんでね。いくら雑魚キャラの君にといえど、襲われたら恐らく抵抗できないだろう」
 木刀でもあれば別だけど。
「雑魚キャラ呼ばわりですか!?」
 あっちのツッコミはスルー。
「ま、君がそーゆーことを絶対にやらないって信頼してるよ」
「え?あ、ありがとう……?」
「ヘタレキャラは絶対そういう行為にいたらないという法則を」
「滅茶苦茶失礼ですよねぇ!?」
 とても憤慨なさっているようだ。
 ふむ……
「じゃあ、襲ってみる…?」
「……え?」
 スカートの裾をちょびっとだけ上げて、色っぽい(と思われる)仕草をして挑発してみる。
「さっきも言ったとおり、ワタシじゃ多分抵抗できないよ……?」
「あ、いや、その……」
 慌てふためき、ごくりと唾を飲む音。
 しばらく見つめ合った後

「洋平~!寂しいあんたを迎えにきてあげたわよ~!」
 がらがらと扉を開け放つ一人の女性徒。
 そして、今のワタシたちの姿を見て固まる。
「……何してるの?」
 静かに、しかし、背後には異様なオーラを漂わせて尋ねてくる。
 固まって動けない新聞部部長。
 代わりにワタシが
 はい、
 と手を挙げ
「襲われそうになっていました」
「日枝ぇぇぇえええ!?」
「洋平ぃぃぃぃいいいいい!!」
 断末魔のような悲鳴を後にして新聞部の部室を後にするのであった。
 ま、お約束の展開って大事だよね。



  • 最終更新:2012-04-21 01:00:54

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