日枝露の災難~Tsuyu VS Sen~

「ほら露、新しいお友達よ」
「むぅ…」
 母親の背中に隠れ、様子をうかがう少女
「もう、露ってば。隠れてないでごあいさつしなさい」
 少女の前には同じ年頃の少年の姿。
「はじめまして。ともだちになってくれるとうれしいな」
 満面の笑みでそう挨拶する少年。
「……うん」
 照れながらも、少女はうなずく。
「いっしょにあそぼう」



「んぉお…?」
 何やら殴打音のような、鈍い音で目が覚めた。
 机に突っ伏していたから頬が赤くなってるやもしれん。
 寝起きの鈍い頭で考える。
 何か夢を見てたような気もする。どーもモヤモヤする嫌な感覚。
 まぁ、そんなことはさておいて、現在の状況。
 現実世界に戻ってみると
「ゆ~き~は~ら~」
「ひぃぃぃぃいいいい!!!」
 鬼の形相の委員長にヘタレ君がフルボッコに遭ってましたとさ。
 おお、伝説の64hits。

「というわけで、木之下君のレア写真を撮ってくること」
「……はぁ」
 ワタシの正面に、腰に手を当てて立ちふさがる委員長。逃がしてはくれないらしい。
「あのお馬鹿が罰を食らうのはわかるけど、何故にワタシまで?」
 委員長のお話し中にボイコットするため、カーテンの裏側に隠れていたお馬鹿は現在掃除中。
「寝てたあんたも同罪です」
 ちっ、納得いかねぇ。

 橘恋花。ウチのクラスの委員長。
 彼女はは駅伝大会やら文化祭やら、ほぼすべての行事を仕切ってクラスをまとめ上げている、いわゆる出来る委員長なのだが、一つ難点は…
「で、何故に木之下君の写真?」
「だって、彼、この学園で五本の指に入るイケメン中のイケメンよ!女の子の憧れの的よ!」
「……はぁ」
 いや、まぁわかるが。
「わたしは恋する花……憧れの男子の写真は持っていたいのよ…」
 うっとりしながら言われましても。
 大体、生徒会役員の写真なら、わざわざワタシが撮らなくても、正規ルート裏ルート問わず、この学園中で出回っているはずだが?
「だから、誰も持っていないようなレアな写真を求めてるんじゃない」
 その上コレクターときましたか。

 殆どクラスの人間が話しかけてくることのない中、委員長だけは平気でワタシに話しかけてくる
 確か同じ中学出身だったような気もするが、最初の顔と名前が一致してない時の自己紹介の時に聞いた話なんでぶっちゃけうろ覚え。
 そういや一回くらい同じクラスになったことがあったかもしれない。
 今更確認する気もないけど。

 閑話休題、委員長の紹介はさておいて、問題はその委員長様のお達し。

 そもそも、レア写真だとか、スクープ写真だとか、あたしゃブンヤじゃあないんだから、そーゆーのは専門外だっての。

 まぁ、とりあえず依頼されたからには一応仕事はするけどさ。
 意外とワタシも律儀だったんだな。。。


 早速、休み時間、木之下君を探す。
 確か彼のクラスは……
 ……あれ、何組だ?
 まぁ、生徒会の連中は嫌でも目立つからすぐ見つかるだろ。

 ってなわけで、いくつか教室を見て回ると速攻発見。
 窓際の席で優雅に読書なんかして洒落込んでますよ。

 整った顔立ち。確かに委員長にとどまらず、学内で人気を誇るだけはある。
 個人的にも好みの顔立ちだ。
 が、だからと言って何かをするってわけでもないがな。
 恋だの愛だのメンドくせぇ。
 そもそも、競争率の高い戦いなんてする気も無ぇしな。
 努力をしたところで、それが報われるとは限らない。むしろ、努力して、その努力が何も結果を残せなかったら何もしないのと変わらない。
 それなら何もしない方がマシだ。
 絶望なんて味わわない方が良い。

 とかなんとか、センチメンタルになっても仕方ないので仕事に取り掛かりますか。
 早速一枚……
 パシャッ
 …って、
「え?」
 しっかりいい角度で顔が映るようにファインダーで確認して撮ったはずなのに、映っているのは本に隠れた姿。
 何で?

 昼休み
 教室にいなかったし、もしかしたらと思って新聞部の部室を覗いてみると、おお、おお、居る居る。
 飯食ってる。
 イケメンの食事中ってのも写真としてはアリかもしれん、と思いまたもや一枚、と。
 パシャッ
 が、
「ええぇ~?」
 今度は何故か見切れてる。
 おかしい、しっかりとファインダーに収まるよう撮っているはずなのに。

 放課後
「お、良いとこにバト君発見!ちょっと手伝って~」
 先生に捕まっている木之下君。
 超メンド臭そうにもしてるけど、ちょっとすると姉と弟、みたいに見えなくもない不思議。
 って、おおっ!?何かなでなでされてるぞ?
 こいつぁ超レアなんじゃね?
 すかさずシャッターを切r…
「ぬぉあっ!?」
 何か飛んできた!?
 間一髪でよける。
 ちょ、これあたってたら、カメラのレンズ割れてたよ。。。
 こーゆー場合、壊れても保証効かねぇから勘弁してくれよぉ。。。
 ってゆーか、何が飛んできたんだ…?
 壁に刺さってる「モノ」を見やる。
 5円玉。
「……わー、ご縁がありますようにってか?」
 なんつー羅漢銭。ってゆーか、指弾か。
 銭形平次かヨ。

 ってゆーか、この男、マジで隙が無ぇ。
 どう考えてもワタシのレンズに気づいていやがる。

 ちっ、こうなったら最終手段。

「ども~、写真部です~。写真撮らせてくださいな」
 ぶっちゃけ、盗み撮りの必要性は皆無なんだから、真っ向からモデル頼んで撮らせてもらえばエエやん。
 ってことに気づいた。
 というわけで、生徒会室に乗り込んでみたはいいのだが

「ニューロリンカーに接続して、と」
「ハードが加速した!」
「ならばこっちは!重妄想!」
「キクが妄想の世界に逃げたぞ!?」
「ふっ、俺の妄想の中だとホロホロのCVは竹達彩奈さ」
「幼馴染に対して妄想ボイスとか、痛い、痛いよこの人!?」
「痛さは~強さ!」
「全力で未完成だよ!?」

 ……何やってんだこいつら。。。

 例の如くカオスな生徒会室。
 そういや最近、この連中と関わること増えてねぇ?

「かくかくしかじかなわけで、ウチの委員長様が生徒会役員の写真を欲しがってるんよ。ってなわけで、写真撮らせてくださいな」
 ちょっち、こっちの事情を説明して公式に撮影許可を願い出る。
 一応、木之下君の写真、ではなく、生徒会役員の個別の写真、ということにしておく。
「撮影は構わんが、無条件で応じるのは不公平だな」
 さっきまで、人の隠し撮りをことごとく回避していやがった男が何か言ってる。
 だが、ごもっとも。
「ふむ……」
 顎に手を当て、ちょっと考えるそぶりを見せ(こーゆーポーズも様になってやがんな)
「穂香とかのも売れるし、意外と売れるかもしれんな」
「ん?」
 何やら呟いていますよ?
「ナタ、キク」
 指をパチンッと鳴らす。
 気障な男だ。
「心得た」
「美少女コスプレキタ―――!!!」
 木之下君の合図に、筋肉ダルマと変態さんがどこからともなく様々なコスチュームを取り出してきた。
「……いや、まさかと思うけど…」
「理解が早くて助かる」
 ……マジすか?
「こちらの写真を撮るのだから、正当な対価だろ?」
「いや、まぁ、もっともな意見っちゃあ、もっともな意見だけどさ」
 何か納得いかねぇ~。
「茉莉、着替えるのを手伝ってやれ」
 ワタシの肩を優しく叩いたマホちゃんの笑顔は、それはもう、憐れみに満ち溢れていたそうな。
「絶望的に君は綺麗だぜ?」
 サムズアップしながら変態さんが何か言ってる。キメェ。


「うんうん、なかなかいい感じじゃない♪」
 後日、出来上がった写真を受け取った委員長は、それはもうご満悦でした。
 こちとら、それと引き換えにバニーガールやら、はだYやら、ネクロマンサーやら吸血忍者やら魔装少女やらetcetc...の格好をさせられたがな。
 分量的に、明らかに正当な対価じゃねぇよな、、、
 嫌いじゃないから良いけど。
「でも、日枝も何だかんだで生徒会とそういうことで一緒につるんで楽しそうじゃない?」
 委員長が唐突にそんなことを言ってくる。
「いや、まぁあの連中に振り回されるのは嫌いじゃないけどさ」
 面倒な時もあるケド。
「この学校ではちゃんと友達作れてるじゃない。他の人と関わろうとしなかったあんたが良い成長だと思うけど?」
「むぅ…」
「一人だけに依存しないで、こうやってたくさんの友達、作ってけば良いんじゃない?」
 ・・・・・・ふん。
「……大きなお世話だよ」
 ホント、おせっかいな委員長様だ。



  • 最終更新:2012-06-12 20:34:20

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